わが娘を想い慈しむ心が生んだ桃の節句
一日ごとに大きく、のびやかに育つわが娘。輝くばかりにまぶしいその笑顔をみつめ、幸せと健やかな成長を願う「ひなまつり」。雛人形を飾り、菱餅や桃の花を供え、白酒で祝うこの日はお子様にとって、そしてご家族のひとりひとりにとって、忘れることのできない大切な思い出の日となるにちがいありません。
●ひなまつりの由来
雛人形の歴史は古く平安初期、今から1,000年も前にさかのぼります。源氏物語の中にも「ひいなの遊び」と呼んで宮中の幼い姫たちの人形遊びが記されています。古くから中国には三月三日あるいは三月上巳(最初の巳の日)に水辺でお祓いをする行事がありました。この行事が日本に伝わり、お祓いをした人形(紙や草でつくった簡素な型代)を水に流して送る日本古来の風習と結びついて「流し雛」の風習が生まれました。これが雛まつりの起こりといわれています。
●桃の節供のいわれ
上巳(じょうし)の節供は日本の古い習し(人形信仰)と中国の上巳の節供が結びついたものです。中国ではこの日に、桃花酒を飲む習慣がありました。これは桃に邪気を祓う力があると信じられていたからで、このことから桃の節供と呼ばれるようになりました。
●女の子の健やかな成長を祝うひなまつり
女の子がやさしく美しく健やかに成長されますよう祈り、家族の絆を深める大切な行事がひなまつりです。節供の「節」は季節の変わり目を、「供」は供え食べること、すなわち旬の食文化そのものを指します。季節の食物を神にお供えし、人々もこれにあずかり収穫に感謝しつつ、季節の変わり目に流行する病を祓うという習し、それがひなまつりなのです。
●季節の食文化
- 草餅(くさもち)
- 蓬(よもぎ)をつき混ぜた餅で上巳の節供に供えます。昔はハハコグサでつくり母子の健全を祈りました。蓬もハハコグサも薬草であり、邪気を祓い疫病を除いてくれると信じられていました。
- 菱餅(ひしもち)
- 江戸後期につくられ、菱形の餅を供える風習は全国で見られました。菱餅の色や枚数は特に決まりはなく器にのせて飾られていました。
- 雛あられ
- 本来は携帯食料で餅を干していったものです。このことからひなまつりは野外の祭りだったと考えられ、正月と同じように野外で神様をお迎えしたのが、後に場所を室内に移しても食べものはそのまま残り受け継がれているのです。
- 甘酒(あまざけ)
- 一夜酒、なめ酒ともいわれ、古く「日本書記」にもその名が見られます。後に室町時代には甘酒売りも登場し、甘味料の少ない時代には大切な飲物として人々に親しまれていました。
- Q1 ひな人形は誰が買うのでしょうか?
- A1雛人形はかつて嫁入道具の一つとして婚家へ贈る習慣がありました。そんな歴史からお嫁さんの実家から孫の健やかな成長を祈って贈るのが一般的です。しかし現在では両家で折半で買うこともありますのでご兄弟や親戚からのお祝い金などを予算に加えて両家で相談の上、お祝いすることもよろしいかと思います。
- Q2 予算を決める場合、何か目安はありますか?
- A2多くの方が予算を決めるのに苦労されているようですが全国的平均から申しますと七段飾りの場合20万~50万円。三段飾りは15万~40万円。ケース飾りは5万~12万円、親王飾りは8万~18万円が一つの目安となっています。
- Q3 おひなさまはいつ頃買って、いつ頃飾るのでしょうか?
- A3初節供の場合、立春すぎから二月中旬までには飾りたいものです。また購入は一月初旬から一月末までに致しましょう。お人形は手づくりのため数量に限りがありますので早めの購入をおすすめいたします。
- Q4 おひなさまは受け継いでゆくものでしょうか?
- A4雛人形は女の子の健やかな成長を祈って飾ります。その子に一切の厄災がふりかからぬようおひなさまが身代わりになってくれるのです。お母様の雛人形を譲ったり、姉妹で兼用するのは避けたいもの。小さいものでも、価格にこだわらずそれぞれのお子様に揃えてあげてください。立雛や木目込親王、市松人形などをおすすめいたします。
- Q5 男雛と女雛、向かって右、左どちら?
- A5一般的には向かって左に男雛、右に女雛を飾ります。この飾りは昭和以降、関東を中心に広まったもので、古式を好む京都では左右逆の飾り方をしています。古風ならば左(向かって右)を上座に、現代風ならば右(向かって左)を上座にと好き好きに飾ってよいのです。つまりどちらに飾っても間違いではありません。